はじめに
ここにたどり着いてくださって、ありがとうございます。
ここでは、髪のことではなく、僕自身のことを少しお話ししたいと思います。
なぜ美容師という仕事を選んだのか。
なぜFermataというプライベートサロンを開いたのか。
そして、これから何を大切にしていきたいのか。
7〜8分ほど、おつきあいいただけたら嬉しいです。
美容師になるまで
美容師という仕事を意識するようになったのは、高校2年生の頃でした。
当時、僕の髪を担当してくれていた美容師さんがいて、その人の仕事への姿勢や雰囲気が、とにかくカッコよかったんです。
技術がどうこうというより、人として憧れる存在でした。
美容室に行くのが毎回楽しみでした。
担当してくれた人との会話も、髪が変わって少しずつ自分に自信がついていく感覚も。
「こういう仕事って、いいな」と思うようになっていきました。
そして高校2年生、僕は進路をなかなか決められず、迷っていました。
そんな中、当時はカリスマ美容師がテレビで取り上げられていた時代で、その世界が華やかに映っていたこと。
そして、担当してくれていた美容師さんへの憧れ。
その二つが重なって、美容師を目指すことに決めました。
日本美容専門学校に進学して、専門学校なのに実践的なことや、プロ目線での仕事の進め方まで学べたのは大きかったと思います。
卒業後は、いろんなサロンを経験しました。
中規模サロン、大手サロン、店長代理、業務委託。
それぞれの現場でチームで動くことの難しさと面白さを知って、体力勝負の日々を過ごして、ときどき「このままでいいのか」という違和感も抱えながら、働いていた日々でした。
今振り返ると、あの頃のすべてが今の僕の土台になっています。
Fermataを開業した理由
いろんなサロンで働く中で、少しずつ自分の中に積もっていったものがありました。
「お客様にもっと丁寧に向き合いたい」
「自分の時間や健康を、もう少し大事にしたい」
「周りに振り回されず、自分の判断で仕事を進めたい」
最初は小さな違和感だったのが、年を重ねるごとに無視できないものになっていって。
そして「これ以上、雇われる働き方を続けるのは違うな」と、はっきり感じるようになっていきました。
それに、僕はもともと一人でやる方が向いているタイプなんだと気が付きました。
チームで働く面白さを知ったうえで、自分の手の届く範囲で、自分の責任で、目の前のお客様にすべての時間を使いたい。
そう思ったとき、自然と「自分のサロンを持とう」という方向に気持ちが向いていきました。
物件は、千葉県船橋市の住宅地のど真ん中。
隠れ家サロンとしてはとても良い物件で、立地を見た瞬間に、ここならお客様がゆっくり過ごせるなとピンと来て、すぐに決めたんです。
サロンの名前は「Fermata(フェルマータ)」。
音楽用語で「一時停止」を意味する言葉です。
忙しい日々の中で、ふっと立ち止まれる時間。
自分の髪のことだけじゃなく、自分自身のことを少し見つめ直せる時間。
そんな空間にしたくて、この名前を選びました。
「自分一人だけの贅沢な空間」というコンセプトも、ここから生まれています。
僕が大切にしていること
僕がこの仕事で一番大切にしているのは、お客様の本質を見極めることです。
これは、髪型を上手に作るとか、技術的にきれいに仕上げるとか、その手前にあるもの。
その人がどんな風に毎日を過ごしていて、何を大事にしていて、これからどう生きていきたいのか。
会話を通じて、その人の生き方や価値観を少しずつ理解していくこと。
それが、僕にとってのカウンセリングです。
1日3名、月50名限定という形を取っているのは、そのためです。
時間に追われずに、目の前のお客様の話をしっかり聞きたい。
髪のことだけじゃなく、最近の出来事や、なんとなく感じている悩みや、これからやってみたいこと。
そういうものを聞いていると、その人にとって本当に必要な髪型や、本当に似合うスタイルが少しずつ見えてくるんです。
長年リピートしてくれるお客様との信頼関係は、僕にとって一番の財産です。
何度も足を運んでくれるということは、髪型だけじゃなくて、ここで過ごす時間そのものを必要としてくれているということだと思っています。
そういうお客様の存在があるからこそ、僕はこの仕事を続けてこられました。
「桑原さんと話して思考がパーッと晴れた」
「自分が本当にやりたいことに気が付けた」
そんな言葉をいただくたびに、髪を整える時間が、その人の何かを少しだけ前に進めるきっかけになっているのかもしれない、と感じます。
その信頼に応え続けたい。
それが、僕がこの仕事を大切にしている理由です。
髪以外で大切にしていること
仕事のこと以外で、僕が大切にしているものが二つあります。
旅と、美味しいものを食べること。
旅は、これまでに9カ国ほど巡ってきました。
特にシンガポールは何度も訪れていて、お気に入りの場所です。
ただ、有名な観光地を回るタイプの旅ではなくて、街中をぶらぶら歩いて、その土地の空気を感じる時間が一番好きなんです。
地元の人が普通に暮らしている路地に入り込んで、看板の文字や匂いや、すれ違う人の表情から、その街の雰囲気を受け取る。
そういう時間が、僕にとっての旅です。
旅から戻ってくると、いつも何かが少しだけ変わっている気がします。
新しい景色を見たり、知らない文化に触れたり。それが日々の仕事や考え方にも、じわじわと影響してくる。
「経験こそが最高の財産」と思っているのは、こういう実感があるからかもしれません。
そして、美味しいものを食べること。
美味しいものを食べた瞬間に「今日も一日、頑張ったー」って、自分へのご褒美にしています。
旅先で出会う食も、近所で見つけたお店も、いただきもののお菓子も。
それぞれに、そのときにしか味わえない瞬間があって、それが僕の毎日を少しずつ豊かにしてくれています。
100歳まで現役を目指して
僕は、できれば一生、美容師でいたいと思っています。
長くお客様と関わり続けたいし、髪に触れる仕事を続けていたい。
そのために、健康管理は欠かせないと思っています。
毎日の自重筋トレとストレッチ。
定期的な歯科検診。
そして、睡眠をしっかり取ること。
特別なことはしていませんが、こういう小さなことを地道に続けていくことが、長く現役でいるための土台になると考えています。
体が資本の仕事なので、自分のメンテナンスを後回しにしないこと。
それも、僕がお客様に対して責任を持つひとつの形だと思っています。
これからのFermata
これからのFermataで僕が大切にしていきたいのは、進化することよりも、深化していくことです。
外に広げていくよりも、内側を深めていく。
新しいお客様をたくさん迎えるよりも、すでに通ってくれているお客様に、もっと深く向き合っていく。
僕にとって、美容師という仕事は、ただの職業ではなくてアイデンティティそのものです。
美容を通じて社会に貢献できること。
目の前の人を励ますことができること。
それが、僕がこの仕事を選び続ける一番の理由です。
髪に触れる時間の中で、その人が少しでも前向きになってくれたら。
明日からの日々が、ほんの少しでも軽くなってくれたら。
そういう瞬間に立ち会えることが、僕にとって何よりの喜びです。
これからもFermataで、目の前のお客様と、丁寧に向き合っていきたい。
これが僕の人生だと思っています。